【試聴】猛暑に吟じたい詩吟「夏日偶成」

2016.07.30

毎日猛烈な暑さが続きます。本なんか読んでられないし、外に出て木陰で涼もうと思っても、むんむんと木から湯気が立っているようです。さて、そんなスーパー猛暑に吟じたい詩吟をご紹介します。

「夏日偶成」三浦英蘭

午倦(ごけん)書を抛(なげう)って 新茗(しんめい)煎(に)る
中庭(ちゅうてい)に搨(とう)を移せば 樹(じゅ)烟(けむり)の如し
緑(みどり)重重(ちょうちょう)の裏(うち) 夕陽(せきよう)照らす
一朶(いちだ)の 石榴(せきりゅう)紅(くれない)燃えんと欲す

意味

夏の日中は何をしていてもけだるく、読んでいた本を放り出し、暑気払いにでもと新茶をいれる。庭の中に腰かけを移動して涼を求めようとすると、庭の樹はもやがかかったようにかすんでいる。青葉が幾重にも重なりあっているところを夕陽が照らしている。一枝のざくろの花は、まさに燃えるように紅く輝いている。

「夏日偶成」について

作者・三浦英蘭(1880-1957)は女性で、明治〜昭和期の漢詩人で画家でもあります。

この詩が作られたのは100年くらい前。今ほどの猛暑ではないにしてもクーラーもない時代。夏の厳しい暑さに対する気持ちは、今とそう変わらなかったのではないでしょうか。

最後に出てくる「石榴(せきりゅう)」とは、ざくろのこと。ざくろの花は夏に咲きます。夏らしい鮮やかな朱色(“紅一点”という言葉はざくろの花が由来だそうです)。「緑」や「紅」、「夕陽」や「石榴」など色鮮やかで美しい言葉が彩りを添えていて、なんとも風流です。

この詩を吟じると、夏の暑さも少しはやわらぐかもしれません。

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