詩吟に適正年齢はあるのか?

2014.10.30

30才のつもりで吟じています!

先日の詩吟道場終了後の飲み会で、ある生徒さん(70代、男性)が、

「30才のつもりで吟じています!」

と言って、場を沸かしてしました。

「またまた〜」という和やかなムードになったのですが、その言葉を聞いた私は、心の底から感動しました。

なぜなら、年齢を重ねてくると、若い時より覇気がなくなって、つい、(中年の私が)自分より若い人に対して、「若いんだからがんばって!」と言ってしまいがちです。

言う方は励ますつもりなのですが、言われた当の本人は、「まだ何も知らないのに期待されても困る」と感じるかもしれません。また、「そちらはがんばらないのか?」と残念に思ってしまうかもしれません。

しかし、今回、70代の彼が、「30才のつもりで吟じています!」と笑いながら言っていた。

かく言う私は現在33才。「私より若いじゃない!負けてらんないわ! 」と元気をもらったのでした。

そんなこんなで今回は、詩吟における年齢についてのお話をしたいと思います。

詩吟がご高齢の方に人気の理由

私の所属する詩吟の会では、「新人吟詠発表会」という、初伝以下の新人さんだけが参加できる発表会があります。コンクール形式で、とっても意気揚々とするものです。

昔からの通例で、70才以上の参加者には「がんばったで賞」的なものがありました。しかし、その年は、参加者のほとんどが70才以上で、どうするんだ!?となっていました(笑)。私が二十歳くらいのときです。

詩吟にご高齢の方が多いことは知っていましたが、改めて「どうして詩吟にはご高齢の方が多いのだろう?」と疑問に感じました。当時二十歳前後の自分にとっては、同世代の詩吟仲間がほとんどおらず、ちょっぴり寂しい思いもしていました。

師匠である母に「どうして詩吟はご高齢の方が多いの?」と聞いてみました。

すると、「道具もいらないし、手軽にできるからじゃないの。」と言っていました。だとしたら、若い世代にとっても同じく魅力的なはずです。

ではなぜ、詩吟がご高齢の方に人気なのか?

10年くらいたって、やっとわかってきたような気がします。

その答えは、「長い人生経験を経なければ味わうことのできない詩心を、声に出して味わう」という楽しみ方があるからではないでしょうか。

そういう視点でいうと、30年そこそこしか生きていない私には、到底達成できない世界なのです。

しかし、なぜやるか。

若い世代の楽しみ方

それは、声に出して吟じることが、とにかく楽しいからです。

それともう一つ。なんとか、詩と、自分の普段の生活との共通点をみつけるようにしてやると、詩吟を知らない人とでも思いを共有することができて、生きる喜びのようなものを感じることができるからです。

私が季節ごとや、送別会や、こんなときにはこれを吟じたい、というのにこだわるのは、そういったところからきています。

しかし、全ての詩を自分の経験と重ねながら味わう、という領域にはとても達していません。それでもいろいろやってみる。もしかしたら後々、人生を経ていくうちに気付くようになれるかもしれない。

そういうことも含めた上で、わからなことばっかりだけど、何だか面白いからやってみる、続けてみる、という未知の楽しさがあります。

「詩の理解なんてさっぱりだけど、声を出すのが気持ちがいいし、身体に良さそう!」とか、「日本の伝統芸能かっこいい!」という思いで始めた比較的若い人や、同じような思いの人が集まって、その思いを共有することが本当に大切なことなんだなあと、改めて感じています。

詩吟のグループにご高齢の方が多いということは、話す話題も共通項が多いのではないでしょうか。実に羨ましい限りです。それに習って我々も、思いを共有するということをやっていきたいと思っています。

詩吟に年齢は関係ない

あの道場から数日後。「30才のつもりで吟じています!」という70代の生徒さんの個人レッスンがありました。ひとしきり「30才のつもり」話で盛り上がった後、

「明日誕生日なんです。でもね、正式には明日じゃないんです。」

とのこと。しばらく、どういうことかな?と首を捻っていたところ、

「私の誕生日は、2月29日なんです。」

と言われました。

なんと、うるう年生まれだったのです!

実年齢は30才よりずっと若かったのでした。あながち、「30才」も嘘ではなかった、という……。

詩吟の魅力は、「どんな年代も、死ぬまで、誰にでもできる」というところです。詩吟の楽しみ方は人それぞれ、年代によっても変わるので、どんな年齢も適正です。

とにかく、「詩吟に年齢は関係ない」ということです。

関連リンク

『詩吟女子〜センター街の真ん中で名詩を吟じる』(amazon)