失うものは何もない

2014.05.15

新人発表会のこと

春のイベントとして楽しみなのが、私の所属する岳智会の「新人吟詠発表会」です。毎年4月に府中の市民ホールで開催されます。

この大会は、初伝未満の初心者さんだけが参加できるコンクールです。審査員の合計点の高い順から、精進賞と努力賞が選ばれます。

全く予想できないのが面白いこの大会。客席100名以上の舞台で一人で吟ずることができるので、結果に関わらずとても良い経験になります。

というわけで、ナチュラル詩吟教室の生徒さんには、毎年たくさんの方にご参加いただいています。

優勝した生徒さん

2014年は、50代女性の生徒さんが精進賞(優勝)を受賞しました。

大会はみんな緊張してしまうものです。しかし彼女はあまり緊張していない様子で、堂々たる吟じっぷりでした。その吟じっぷりが優勝につながったのだと思います。

私は自分が緊張しいなので、当の本人に「どうしてあんなに堂々と吟じれたのですか?」と、その秘訣を聞いてみました。

「『失うものは何もない!』ですよ!」

と、彼女は元気な笑顔で言いました。

いったい、どういうことでしょうか。

失うものは何もない

よくよく聞いてみると、彼女は数年前から和太鼓を始めていたとのこと。それがとっても楽しかったそうです。でも、発表会が近づくとプレッシャーが押し寄せてきてしまう……。

和太鼓の発表会の場合は、もし間違えたら連帯責任になってしまう。これが、彼女にとっては辛かったとか。反面、詩吟は基本一人だから、もし間違えても人に迷惑はかかりません。

「詩吟は仕事でも何でもないのだから、間違ったって何したって、誰にも迷惑かけるわけじゃない」というわけです。

なるほど、確かに・・・。

そういう気持ちで挑めば、変に緊張せずに、堂々と吟ずることができるかもしれません。

参加することに意義がある

そもそも詩吟とは、自らを乗り越える力をつけること。声を出すこと、舞台に立つこと、この非日常に挑戦すること、それ自体が向上につながります。

惜しくも受賞ならずだった生徒さんたちからは、「思うような詩吟を吟じることができなかったのでもっと頑張りたい」、「詩吟らしい詩吟が吟じたい」という新たな目標があがりました。

「参加することに意義がある」

先ほどの優勝した彼女は、「失うものは何もない」とともに、この言葉もよく使っています。