もしも、こんな詩吟マンガがあったら

2018.12.21

能のマンガを読んでみた

友人のススメで「能」のマンガを読みました。その名も『花よりも花の如く』(上記画像)。少女コミック「花とゆめ」連載のバリバリの少女漫画です。

内容は、主人公のいわゆるメガネくん(実は超かっこいい男子)が、能に励むというもの。能役者としての生活もさることながら、その私生活のことある事件と、演目の内容がよくできてリンクしています。

能の演目の内容の理解にもなるし、何よりとっても能が観たくなります。しかもぜーんぜん難しくない。がんばってる感じとか、能が大好き!という愛と成長の物語。「家族みんなが応援してます!」という設定が、本当にあったかくて良い感じです。

それにしても、見た目が美しいとこんなにも惹きつけられるのか~、とため息が出るくらい魅力的で美しい画です。

もし詩吟マンガがあったら

ちょうど昨日のレッスンで、生徒さんから、民謡や津軽三味線のマンガがあるらしいというお話しを聞きました。なんでも、コンクールに向けて頑張るんだとか。なぬ!それでは詩吟マンガがあっても全然おかしくはないではないか(笑)!

というわけで、もし詩吟マンガがあったら、という妄想です(笑)。

詩吟ではコンクールとなると、超派手な着物で豪華な舞台で吟じることがあります。それこそマンガになったら、魅力的だろうーなーと思います。美男美女が美しい着物で吟ずる……的な!

しかし、実のところ、それはある一定の流派のスタイルであって、全ての詩吟が豪華絢爛というわけではありません。つまり、豪華な衣装でなくても、詩吟はできる!ということ。

そうなると、なーんだ、つまんない!ってなりそうなんですけど、そのがっかり感から詩吟マンガが始まったら面白いんじゃないかなーって思ったりしてます。

派手な着物着てかっこいいという思い込みから始めました!という主人公が、あれあれー!全然地味じゃーん、失敗したー!みたいながっかりから始める。しかしそこにはとんでもない面白が待っていた…!!!!!!

マンガのような出来事

そんなことばかり考えていたら、数年前の出来事を思い出しました。

ナチュラル詩吟教室かけ出しの頃、大学生の生徒さんがいたんですけれども、彼は、大学の詩吟部に、半ば騙されたようにして入ってしまった (まあ、サークルとか部活の入部ってそんなもんですよね)。で、まあその部活の稽古が厳しいし(なぜか走り込みとかやらされていて)、年配のOBは口うるさい(笑)。そういうこともあって、ナチュラル詩吟教室に傾れ込んで来てくれました。

それで、あるとき、流派の若者がんばろうの会みたいなのがあって、彼を誘ってみたんです。

結構いい会場でちょっとしたステージがあって、一人一人吟じるわけですが、当時はそもそも若者が少なくて、モチベーションがなかなか上がりませんでした。でも、その彼がものすごーくかっこよかったんです。マイクから一歩離れて、マイクなんて僕にはいりません!みたいなスタンスで超堂々と吟じていました。

若者がんばろうの会は、先輩たちが我々世代のために頑張って開催してくれたのですが、そもそも若者が少なすぎて、若者も通り越して中年になりましたみたいな(私みたいな)人が多いなかで、何のタイトルも段位も持たず、詩吟を始めてちょっとの彼が一番輝いていたように思いました。

私はかつて、あんな良い意味での「オレはオレ」みたいな詩吟を観たことがありません。かと言って俺酔いしてるわけでもない。堂々ということは彼のためにありき!みたいな瞬間でした。

彼はその後、就職活動の面接で度々詩吟をやって、遂には内定まで取り付けました。本来詩吟が、よりよく生きるための身体能力を高める手段の一つ、ということを目の当たりにしたような瞬間でした。

詩吟はネタの宝庫

詩吟教室を始めて感じた面白さは、このような生徒さんたちの物語です。ドラマやマンガのようなリアリティと感動があります。

詩吟の既存のイメージにおさまらない、詩吟における本当の面白さ。詩吟を通して、人のかくれ持った面白さを表現できたら!……なーんて。

というわけで、詩吟マンガの監修はぜひこの私にお願いします!(笑)